洗い張りから現在の着物クリーニングへ|和服の洗濯文化の変化

着物を洗う方法は、着物の形や暮らし方の変化とともに移り変わってきました。かつては着物を縫い目からほどき、反物に近い布の状態に戻して洗い、張り板や伸子(しんし)で張って乾かしてから、再び仕立てる「洗い張り」が行われていました。これは単に汚れを落とす作業ではなく、布を整え、着物を仕立て直して長く使うための技術でした。

着物をほどいて洗うという発想

現在の衣服の洗濯では、服の形を保ったまま洗う方法が一般的です。一方、和服は直線裁ちの布を縫い合わせた構造を持ち、縫い糸をほどけば布地を広げられます。洗い張りでは、着物を解いて布の状態にし、水で洗い、糊を引いて張り、乾燥後に仕立て直しました。洗うことと、布の形を整えること、仕立てを直すことが一続きの仕事だったのです。

この工程には、ほどき、洗い、張り、乾燥、縫製という複数の手仕事が伴います。洗った布を均一に張る道具として張り板や伸子が用いられました。世田谷デジタルミュージアムの収蔵品解説は、着物をほどいて手洗いし、張り板で乾燥させる作業を紹介しています。香川県立ミュージアムも、伸子張りを、解いた着物を反物の形にして乾燥させる方法として説明しています。

着物の構造が洗い方を決めていた

洗い張りは、着物を布に戻せる構造だから成り立ちました。布の幅や柄合わせ、縫い代、裏地などを理解し、再び着物に仕立てる前提で進める必要があります。つまり、洗濯の技術と和裁の技術は、歴史的に切り離せない関係にありました。衣服を洗うことが、仕立て直しや寸法調整と近い位置にあった点は、現代の衣類ケアと大きく異なるところです。

丸洗いが広がり、洗い方が分かれていく

生活様式や衣服の扱いが変わるにつれて、着物を解かずに洗う方法も広まりました。現在「着物クリーニング」と呼ばれる仕事には、着物の形を保った状態で行う洗浄や、部分的な処置、洗い張りなど、目的と工程の異なる仕事が含まれています。ここで大切なのは、現代の方法を昔の洗い張りの単純な置き換えと考えないことです。工程が違えば、扱う対象も仕上がりの目的も異なります。

洗い張りの歴史を知ると、着物クリーニングが「洗う」だけの一語では語りきれないことが見えてきます。着物の構造を保ったまま扱う技術と、布に戻して整える技術。二つの発想が並行して受け継がれてきたことが、和服のお手入れの背景にあります。

参考にした資料

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